スリランカ・スタディ・プログラム - 報告書「第2部 第2章 第3節 第4項 環境から考える持続可能性」
第4項 環境から考える持続可能性
<問題意識および問題意識をめぐる議論>
取り扱うテーマ:当班では「水」という視点から環境問題について取り組んだ。その理由は、「水」はあらゆる環境問題(自然災害、生物多様性、公衆衛生、環境汚染など)に関係し、また、持続可能な開発目標(Sustainable Developing Goals: SDGs)の目標6に取り上げられるなど、「水」に関する問題は国際的な関心も高いと考えたためである。
スリランカにおける水問題:スリランカにおいて都市人口の75%がパイプシステムによって飲み水を得ている一方で、地方人口でのそれはわずか14%である。これより同国では水質における都市と農村の格差が顕著であり、地方では井戸水を飲み水として使用しているのが現状である。 また、スリランカにおいて水に起因する問題に腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)が挙げられる。現在、北部地域で慢性的なCKDが増大している。具体的には、北部地域の約15%(40万人程度)がCDKを患っており、年間2,000人が死の脅威にさらされているとされている。CKDの原因は解明されておらず、この点が事態をより深刻にしている。
<議論の内容>
CKDを減らすためにはどうすればよいのかという点について議論した。CKDの原因が解明されていないため、ここでは一定の仮定を置いて議論を行った。
- 課題:「2020年までにCKD患者の半減を目指すにはどのような政策を行えばよいか?」
- 仮定:「井戸取水による高濃度フッ素摂取が主原因だと仮定」
- 意見:井戸水を摂取しないために水の社会基盤を再整備することが必要なのではないか。水質改善の端末を井戸に投入するなど、短期的な方法で隙間期間に対応する。 5年後までにCKDを半減させることを考えると、上水道の整備により解決することは難しく、井戸水の水質改善を優先するべきではないか。 井戸水を使用することのリスクが認知されていないのではないか。そうであれば井戸水をどのように使えばよいかを啓蒙する環境教育が有効であると考えられる。
<問題意識に対する仮説>
- 地下水に含まれるフッ素がCKDの主原因となっているのではないか?
- 地下水を使用することのリスクが認知されていないことが問題をより深刻にしているのではないか?
<勉強会参加者 所感>
スリランカの環境を知り、同時に日本の環境や世界各国の環境問題についても同時に知ることができた。日常的に日本で生活していると考えられないような水不足について深く熟考できたことは、将来、自分自身が開発キャリアに進むとすればとても有意義に働くだろうと確信している。