援助協調、援助効率向上の理想と現実
タンザニアにおける援助協調と今後の課題
UNDPタンザニア事務所 援助協調専門家
ナブ(鈴木)裕子さん
略歴: ナブ(鈴木)裕子
デラウェア大学国際関係学部卒、ピッツバーグ大学国際開発学修士卒。アメリカ首都ワシントンD.C.にて、1999年より国際開発専門民間機関での勤務を経て、2003年12月よりUNDPタンザニア事務所でJPOとして勤務、2006年より同事務所にて援助協調専門家として現在に至る。主にドナー会合事務局主任として援助協調に関わるが、援助協調効率化に関しての政府への助言と援助、また、タンザニアにおける国連改革:Delivering as Oneにも国連の援助協調効率化という観点からサポートも行っている。パリ指標2006年、2008年ともタンザニアのドナー調整役、そしてアクラハイレベルフォーラムにタンザニア政府代表団の一員として参加。
1.はじめに
2.タンザニアにおける援助効率化への取り組み
3.問題点:パートナーシップの変化
4.分析:理想と現実
5.私の提言
タンザニアの援助強調への取り組みはアクラ、パリ、ローマ宣言以前より始まっており、アフリカ諸国の中でも、とりわけ政府のオーナーシップのもと援助強調の進んでいる国との評判高い。援助改革は90年代半ばから始まり、援助強調の枠組みも2002年のTanzania Assistance Strategy(TAS)、2006年には19のドナー国と署名を交わしたJoint Assistance Strategy for Tanzania (JAST)などを基盤に取り組んできた。また、パリ、アクラでも取り上げられた、Mutual Accountabilityの枠組みを90年代半ばに導入した国でもある。国家財政の4割近くを無償有償援助資金でまかなっており、40以上のドナーからの2BillionUSDに近い援助を受け入れているタンザニア。援助効率化は、国の3.3割近くの国民がBasic Poverty Lineにも達していない国にとっては優先順位の高いテーマでもある。
アフリカのなかでも援助協調に関しては新しい取り組みを積極的に提案し、実地してきたタンザニア。そのタンザニアで、近年開発援助パートナーシップに変化が起きている。タンザニアで過去5年以上に渡り、援助強調(特にドナー強調)をしてきた経験から、この変化について意見を述べたいと思う。
2006年12月に19のドナーと署名を交わしたJoint Assistance Strategy for Tanzania (JAST)はタンザニアにおける援助効率化のための枠組みであり、実に2年近くかけて、タンザニア政府のリーダーシップの下、政府によって起草されたものである。この枠組みは、カントリーオーナーシップ、Domestic Accountabilityの強化を、政府のシステム活用促進、タンザニアのニーズへの整合、援助デリバリーメカニズムの調整協調、そして包括的な政府のリーダーシップのもとでのパートナーシップ強化を通じて、促進しようとするものである。こうした中、一般財政支援は政府にとってのPreferred Aid Modalityとして、推進されており、2001年から始まったこのモダリティ、現在では援助資金の3割以上、国家財政の1.4割を占めている。一般財政支援だけでなく、タンザニアでは、この他セクター財政支援、バスケットファンド、プロジェクトファンドなど様々な援助モダリティが活用されており、政府の包括的なパートナーシップ促進の意図のもと、政府とドナーはともに援助効率化に取り組んでいる。
特に2006年から政府とドナーが取り組んできたのが、政府の援助管理システム・能力の向上、政策対話のストラクチャー強化と政府リーダーシップ強化、コア改革促進とシステム活用促進、そして効率的なDivision of Labourによる援助効率性向上などである。これらの取り組みはパリ宣言での援助効果向上のアジェンダに法ったものであり、国際的な援助効果向上のコミットメントの国レベルでの実地、といった位置づけである。アクラハイレベルフォーラムでも再認されたこれらのアジェンダ。これらの取り組みを積極的に推進しているのが、開発パートナーグループ(Development Partners Group/DPG)というドナー会合である。そして財政支援ドナーの協調に取り込んでいるのが貧困削減財政支援グループ(Poverty Reduction Budget Support Group/PRBS Groupという会合である。
政府のリーダーシップのもと積極的に推進してきた援助効率向上化だが、2008年、2009年はその取り組みに大きな拍車がかかった。政策対話のストラクチャーが本格的に実地されるのである。これに連合して、ドナーのDivision of Labourも長い月日を経て、ようやく承認された。
タンザニアにおける政策対話は、2001年にConsultative Group (CG)が廃止されてから、ハイレベルでのドナー、国際機関、政府の共通のフレームワークは時々行われるセクターレベルでの対話以外、存在していなかった。唯一のハイレベル政策対話は、ドナー国の大使と政府機関の責任者であるチーフ事務局長とのDevelopment Cooperation Forum (DCF)であるが、2005年に再開されるまで、この対話は行われていなかった。2005年以降このDCFがハイレベルでの政策対話の場を設けていたが、この対話はどちらかというとInformalな対話という位置づけで、全体の開発戦略、貧困削減に関する共通のフレームワークは皆無に近かった。そのためか、政策対話はどちらかというとドナーのニーズに合わせた、ドナーによるドナーの対話ばかりが中心となり、政府とドナーの効率的なパートナーシップというものが少しづつ弱まってきたようであった。
そのため、政府のリーダーシップの基でのタンザニアのニーズにあった政策対話のフレームワークの必要性が2006年以降注目され、2008年に確立したこのストラクチャーはタンザニアの貧困削減戦略のニーズに基づいたストラクチャーとして実地されることとなる。同じく長い年月をかけて、承認されたDivision of Labourだが、この政策対話のフレームワークのもと実地されることとなる。
こうした政府のリーダーシップのもと進んできた援助協調。そしてアフリカ諸国の中でも特に政府の援助協調におけるリーダーシップが強いと評判のタンザニア。そのリーダーシップを積極的に支援してきたドナー。今、この構造に変化が訪れている。Division of Labourそして政府のリーダーシップのもと実地される政策対話。この二つを意欲的にサポートしてきたはずのドナーの対話への姿勢に変化が見られるのである。
ではいったいどんな変化が見られるのであろうか。タンザニアのドナーは従来、政府のリーダーシップを協調、積極的にサポートしてきた。このサポートは意識的に、政府に時間を与え、政府の意図、ニーズを尊重するような姿勢で政策対話に臨んできた。もちろん、共通のフレームワークのない中での対話ではあるが、DPGやPRBS Groupを中心に政府幹部との対話を設けてきていた。しかしながら、貧困削減戦略のReviewが行われている2009年、益々重要となってくるこの政策対話だが、この対話へのドナーの姿勢が「Conditionalityをベースとする交渉」を思わせる姿勢へと移り変わってきているのである。政策対話の場所が、意見を交換する場所ではなく、お互いの主張を強調し、交渉する場所になっているのである。
今年、タンザニアは貧困削減戦略の見直し、Reviewを進めているが、こうした姿勢の変化が援助効率化をすすめるパートナーシップに影を落としているように思われる。今タンザニアは援助効果向上への取り組みの理想と現実、コミットメントと実施状況の距離を肌で感じている。
こうした背景には、国際的な経済不況に伴う、援助額の削減、ドナー国のDomestic Accountabilityの強化、またタンザニア政府内での援助効率化に関してのリーダーシップの変化などが挙げられる。しかし、それだけではなく、タンザニアでの援助効果向上への取り組みが、いよいよドナー国内の援助改革に関して政治的、システム的、そして人材的に、とても厳しい大幅な改革を要求するようになってきており、理想と現実の狭間に、今、タンザニア政府とドナー国がたたされているのではないかと思う。
4.1.開発貧困削減の現実
タンザニアのパリ指標2008年の結果はアフリカ諸国の中でも、援助協調がかなり進んでいるという印象を受ける。タンザニアの援助額は上昇してきており、一般財政支援額も増加してきた。その一方で、開発貧困指標は必ずしも一致して改善されてきたわけではなく、2008年に行われたHousehold Budget Surveyの結果、特に貧困率の改善は著しくなかった。このHousehold Budget Survey が比較した時期が、一般財政支援の年月と一致することからも、間接的に一般財政支援の成果に関して、益々厳しい質問がドナー国内、そしてタンザニア政府との間で問われている。一般財政支援というモダリティ自体、各ドナーのタンザニア事務所はそれなりのリスクを負って推し進めてきた。
一般財政支援の存続、成功がタンザニア事務所のパフォーマンスにつながっており、推し進めてきた援助関係者たちもそれなりのリスクを負っている。しかしながら、一方で開発貧困への取り組みは、タンザニアでは40年近く行われてきており、その効果うんぬん以前、あらゆる方法、モダリティが試されてきたはずである。開発貧困指標のあり方にも注意が必要であるとは思うが、同時に開発貧困への取り組み、国の能力開発向上の取り組みの奥の深さを援助関係者は肌で感じているのだと思う。しかしながら、ドナー国もおちおちとその奥深さに浸っているわけにもいかないであろう。ドナー国のアカウンタビリティ、そして政治的にも、さらにチェックアンドバランスの強化、モニタリングの強化が必要とされてきている。リスクを背負って推し進めてきたモダリティだからこそ、その成果を示していかなければならない。この成果というのが、貧困削減という最終目的だけでなく、それ以前に、政府のシステム、ポリシー、戦略フレームワーク、能力向上を焦点に政策対話を通してされるというのが、一般財政支援の枠組みで署名されている。なので、これに焦点をあてたConditionalityベースの政策対話に関心が集中する。タンザニアのように、特に政府とドナー間での共通政策対話のフレームワークなしでおこなわれてきた政策対話、どうしてもこうしたConditionalityベースの対話ばかりが行われるという現実が、今とくに浮き彫りにされているのかもしれない。
4.2.オーナーシップの理想と現実
アクラハイレベルフォーラムでも、焦点をあげられたDivision of Labour。どちらかというとドナー間でドナーの都合に併せたDivision of Labourという印象の強いプロセスであるが、このプロセスを進めていく過程で、効率的なDivision of Labourのためにはタンザニア政府のリーダーシップ、オーナーシップが不可欠であるという結論に達したタンザニアのドナー国々。これに答えて、タンザニア政府は実に勇気のいる決断を下した。タンザニア政府の上部管理役員たちがドナー国々のComparative、Competitive Advantagesを分析した上で、Division of Labourのプロポーザルを提示したのである。ところが、中には受け入れがたいプロポーザルもあり、ドナー国々で自己分析、そしてセクターレベルでのPeer Reviewを経ることになった。
この過程で、ECなどのようにMember Statesのなかで承認されたCode of Conductにも明記されているパートナーカントリーの最優先事項に則ったDivision of Labourの必要性よりも、ドナー国の最優先事項のほうが、実は優先されており、Division of Labourはタンザニア政府のフレキシビリティのほうが最終的には、Division of Labourの承認には不可欠だったということが浮き彫りにされたのである。パートナーカントリーのオーナーシップ尊重、サポートの不可欠さが謳われたアクラ、パリ宣言であるが、これを実現されるには、ドナー国にとって、想像以上のリスクと、それを培うためのスペースをパートナーカントリーにあたえなければいけない。このドナー国でのフレキシビリティは、政治的にもアカウンタビリティの観点からも、なかなか難しいのかもしれない。しかし、パートナーカントリーにとっては、期待はずれの、「結局、ドナーも口ばかり・リップサービス」と言わさざるを得ず、勇気あるプロポーザルを出したがゆえに譲れないところもでてくる。この交渉、対話を通じて、ドナーと政府の距離がすこし開いてしまったかもしれない。
4.3.援助関係者人材プロファイル
あらゆるセクターの専門家と言われる人材はこれまで、技術提供、技術移転などを中心としたTechnical Cooperation、Technical Assistanceとして派遣されてきた。アクラでも焦点のあたった、この技術提供の能力促進開発に関しての貢献と成果だが、タンザニアでも技術提供、移転のあり方自体見直し、改革をしようという動きがある。これに伴い、優先的にタンザニア人による技術提供、そしてアフリカ諸国からの南南協力の有効性に焦点があてられている。また、一般財政支援、セクター共通コモンファンド・バスケットファンドなどの増加に伴い、ドナー国人材の技術提供移転自体が減少しているように感じられる(注:これは残念ながら、統計に基づいたものではない)。これに伴い、ドナー機関は技術提供から助言・アドバイス提供へと焦点が移行している。例えば、イギリスなどは各セクターのアドバイザーが政策対話に非常にレベルの高い専門家が対応している。しかし、その一方で様々なモダリティを起用しているドナー国は、プログラム管理者からそうしたアドバイザー起用への移行が予算的にも厳しく、そうしたプログラム管理者などがセクターの政策、戦略対話に対応しているという現実がある。こうした管理者たちは、専門性の高い助言、見解を必要としている政策対話になかなか的確に対応できず、むしろ管理者的な、プロセス重視の見解・意見を述べることとなる。政府の人材・専門性の限界などもあり、こうした政策対話がプロセス重視、そしてモニタリング要素の高い対話になってしまう。例えば、保健セクターの政策対話には常に30−40人ほどのドナー関係者が出席するのだが、そのうち保健セクターの専門家は少数という現実。援助環境の変化にもとなった的確な人材派遣の厳しさがこうした、プロセス志向Conditionality志向の政策対話を助長させていると思われる。
4.4.援助協調インダストリー、そしてDonor Bureaucracy
また、援助効果向上に伴い、ドナー調整も益々進んでいるが、この援助効果向上への取り組みがグローバルだけでなく、カントリーレベルでも援助協調インダストリー化しており、これに伴う人材増加が実はパートナーカントリーの必要としている人材ではなくなってきているのではないかと思う。最近の傾向として、各ドナーに援助協調を主とした人材派遣が盛んになってきていると思う。しかし、この援助協調、援助効率向上化というのはその専門家だけによってされるものではなく、あらゆるセクター、あらゆるモダリティの運営管理においての担当者が推進していくものである。近年、財政支援に伴って、プログラム管理する件数が減っていく一方でドナー機関の人材が減少したかというと、実はそれほどでもない。また、援助協調に伴って、援助管理プロセスなどが減少し、政府関係者との対応なども減少した。この隙間を埋めるかのように、ドナー間の協調に伴って、いわゆるDonor Bureaucracyという現象が、政策対話を益々、交渉の場所へと推し進めていっているように思われる。例えば、セクターの政策を政府が提示すると、ドナー間のセクター会合の中で、タスクフォースが組まれ、その政策に「赤ペン」がいれられ、そのコメントをタスクフォースで討論された後、セクタードナー会合でまた討論され、ドナーの共通意見がまとめられる。その後、ドナー間でその共通意見を誰がどのような方法で政府に提示されるかが決められ、その後ドナー会合から政府へと文書が提示され、政策対話へとこぎつける。援助協調インダストリーの一部として、こうしたDonor Bureaucracyを支えるセクターレベルでのドナー会合の事務局が設置され、セクターレベルのドナー会合の調整スタッフが派遣される。こうした調整スタッフは政府のセクターレベルでの調整能力を支援することのあまりないまま、ドナー調整、共通意見の確立に明け暮れる。こうしたセクタードナー調整事務局も、これまた援助協調インダストリーの大きな波として、タンザニアに押し寄せている。こうした動きは「シャドー政府・影の政府」を生み出し、助長してしまう危険性がある。
4.5.インセンティブ
一般財政支援に関しての、援助関係者が負っているリスクだけでなく、ドナー援助機関のインセンティブも、交渉、援助、助言の圧しつけを助長するのではないかと思う。援助機関のセクタースタッフたちは、政策対話でドナー調整のリーダーシップをとっているか、というのがひとつの大きな評価要素になっている。また一般財政支援、セクター財政支援、共通コモンファンド・バスケットファンドへの移行率、拠出額・率などもインセンティブになっている。これは、評価されるべきことだと思うが、その移行率、スピードが受け入れ側の波長と合っていないと、そうしたモダリティのリスクを減少させるため、政策対話を通して、政府の政策・プロセス・システムを乗っ取ってしまうような態度にでてしまうと思われる。
5.1.パートナーカントリーの更なる枠組みの強化
上記にも述べたとおり、タンザニア政府は援助効果向上の枠組みに早くから着手し推進してきた。この枠組みを19のドナー国の署名したというのは、パリ、アクラでの援助効果向上への取り組みの上で不可欠なことであると思う。しかし、それ以上に政府内での援助管理に関してのプロセス、システムの強化、それによってタンザニア政府の更なる援助交渉力の強化がこれからの援助効果向上に向けて、不可欠であると思う。特に、プロジェクトからプログラム、バスケットファンドから財政支援と移行していくにあたって、援助関係者の役割だけでなく、政府の様々なレベル、部分で今までとは違う、役割、責任が与えられてくる。しかし、この援助管理のプロセスは、まだプロジェクト援助管理を主にしていたプロセス、システム、役割から移行仕切れていない部分があり、これが政府全体の援助管理の協調に影響を与えていると思う。これに関して、タンザニア政府は援助管理の新たなプロセス、役割分担を明確にし、マニュアル化することで、政府の援助管理の協調を推進しようとしている。これに伴い、援助に関するデータ管理を強化するために、援助情報管理システムを導入しており、これらによっての援助効果向上への成果に期待したいと思う。
5.2.オーナーシップ、リーダーシップ強化のためのCapacity Building
2008年に設置された、政府のリーダーシップの下での共通政策対話フレームワーク。この効果的な実地のためには、より効果的な強化された政府のあらゆるレベルでのリーダーシップが不可欠である。このリーダーシップは、より強化された政府の専門、管理、実地能力に裏づけされた内容の濃い政策対話によってますます推進されるべきだと思うが、その能力は専門性だけに限らず、ソフトな能力(交渉能力・対話能力・管理能力)も強調されなければいけないと思う。こうしたセクターレベル、中央政府の益々の能力強化がこれからの政府のリーダーシップを推進していくものだと思う。
5.3.Mutual Accountabilityフレームワークの強化
Independent Monitoring Group (IMG)をいち早く取り入れたタンザニアだが、そのレポートを効果的に援助対話に取り入れていく必要性があると思う。Consultative Groupは廃止されたが、それに近い、ドナー国の本部との直接対話を通じて、こうしたMutual Accountabilityレポートの結果、今後の課題などについて話し合う場所を設けていく必要があると思う。タンザニアにとって開発貧困戦略のReviewプロセス、そして新たな2世代戦略起草プロセスはこうした対話機会を提供していると思う。積極的な政府のリーダーシップのもとでのMutual Accountability対話は、今のタンザニアにとって不可欠であると思う。また、タンザニアの議会もこうした援助効果に関して、積極的に対話する機会をふやし、これから益々のタンザニアのDomestic Accountabilityを推進していく必要性があると思う。
5.4.更なる国連改革を通して、国連機関の役割強化
タンザニアにおける国連改革は、タンザニアにおける援助改革において、さらなる国連機関の役割を強化するために不可欠なものとして、実施されている。タンザニアの共通政策対話のフレームワーク実施においてより政府のリーダーシップを強化するためにも、また政策対話の内容(Substance)を強化するためにも、また、時にはドナーと政府間を中立な立場で調整するためにも、より強い国連機関の役割・能力支援が必要となってきている。国連機関の様々なプロセス・システムを統合しつつ、それぞれの国連機関の専門性・強みを生かした、パートナーカントリーのニーズに合った、助言、支援を事務的Transaction Costsをおさえた形で行っていくことによって、より政府のリーダーシップ、管理能力を強化していく必要があると思う。国連改革は内向きな改革になりがちだが、外向きなニーズと環境に整合した国連改革を通じて、これからの援助向上効果への支援をしていく必要がある。
5.5.ドナー国の更なる援助改革
援助の政治的要素は避けられない大きな要素である。そのため、ドナー国のDomestic Accountabilityを大幅に改革するということは不可能でないにしても、厳しいものがあると思う。しかし、政府機関のインセンティブの見直し、人材プロファイル・派遣の見直し、予算の見直しは短期とはいかなくても、中期展望でできると思うし、これから更なる援助効果向上には不可欠だと思う。例えばDACのアクラフォーローアップとして様々なイニシアティブ、ケーススタディが行われているが、パートナーカントリーのDomestic Accountability フレームワーク、Incentives、システムなどに焦点をあてたものが多いが、ドナー国のインセンティブ、人材派遣などをオーナーシップ、リーダーシップ強化の観点から分析し、改革につなげていく必要があるのではないかと思う。
タンザニアでは日本の援助改革(特に一般財政支援導入)は、ひとつのサクセスストーリーとされている。タンザニア政府は日本の更なる貢献、そして日本のComparative Advantagesをベースとした政策対話への積極的な貢献を期待しているようである。例えば、日本は政府のDivision of Labourのプロポーザルで2、3の重要なセクターでのドナーリーダーシップを期待されていた。こうした中、これからの日本の役割、貢献、そしてそれを推進する援助改革・人材改革、また、国連改革への日本の取り組み、そして日本の国連への貢献など新たな課題、提言に期待しつつ、これからもタンザニア政府の援助管理、援助効果向上にむけてのサポートを続けていきたいと思う。
参考文献・サイト
Joint Assistance Strategy for Tanzania (JAST) 2006
JAST Action Plan and Monitoring Framework 2006
Development Today, article on Mozambique: Review criticized growing donor bureaucracy, May 2009
2009年8月9日掲載
担当:中村、菅野、宮口、藤澤、迫田、奥村、荻、高橋