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カンボジア・スタディ・プログラム報告書(目次はページ下にあります)

第2章第2節:第2回勉強会

実施状況

第2回勉強会が始まります…!みなさん準備万端です@Tokyo

第2回事前勉強会は、2012年10月13日(土)14時〜17時の日程で、23名の参加者が「カンボジアにおける国連平和維持活動(PKO)、日本と日本人の貢献」をテーマに勉強し、参加者3名がプレゼンテーションを発表しました。講師には、内閣府国際平和協力本部事務局で研究員をされている栃林昇昌さんをお招きしました。

勉強会議事録

国連平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations:国連PKO)とは、国際政治の制約の中で世界各地における紛争の解決のために国連が行う一連の活動のことである。主な業務として、平和維持隊による停戦監視・兵力引き離し、停戦監視団による停戦監視といったものがあるが、冷戦後は文民警察活動や、選挙、復興・開発、組織・制度構築を含む行政的支援などの活動に移行してきている。

大きなトラブルもなく…オンラインを活用した大阪からの発表が始まります@Tokyo

カンボジアでは、包括的な政治解決に関する協定を定めるパリ和平協定の合意を履行するために1993年安保理決議745によって国際連合カンボジア暫定統治機構(United Nations Transitional Authority in Cambodia:UNTAC)を設立。戦後のカンボジアにおいて人権と自由を認める公平な選挙の実施、紛争の調停、文民行政、法と秩序の維持、カンボジア難民の本国帰還・再定住、カンボジアのインフラ復旧を任務として新政府樹立までの1993年9月まで活動した。現在それらの活動は、カンボジア政府、及びNGOが引き継いでいる。

日本では、1992年6月国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与することを目的としたPKO協力法を定め、物資協力、経済協力、技術協力など様々な分野において援助をしてきた。また、現在PKOでは、人・資源・資金不足が問題になっており、特に人材養成に力を入れている。例として2005年には内閣府の事業の1つとして国際平和協力研究員制度を整え、国際平和協力分野における人材育成と機能強化に向け、現在7名が活動をしている。

質疑応答一部抜粋(Q: Question, A: Answer)

Q1:紛争後市民が政治に関心を持つことが復興の鍵という事だったが、どのようにしたら市民が政治に関心を持つようになると考えるか?(ハングアウト参加者:池田さん)

A:PKO活動は紛争地域の当事者間和平合意後に開始するが、その時は政治機構が曖昧なため新しい政権にする選挙が必要となる。1990年に初めてPKOによる選挙支援がナミビアで行われたが、この取り組みは監視型から復興型への移行を意味するものとなった。選挙を行う際には、有権者教育といって選挙の意味や政治参加の方法などを一般市民に教えているので市民も民主的な政治について学ぶことができる。(講師:栃林さん)

大阪会場はこのような感じです@Osaka

Q2:投票率を上げるのは難しいと言われているが、実際にはどのような支援活動を行っているのか?(東京会場参加者:桑田さん)

A:PKOの選挙支援活動はPre-election(準備:長い時間を必要とする)、Election(選挙当日)、Post-election(選挙後)という3つのサイクル支援を行っておりで多岐に渡る活動を行っている。2007年に行った東ティモールは成功例である。独立前の選挙は国連が行ったため、2007年には東ティモールが主体となって選挙を行った。選挙前や有権者教育など多岐に渡って行った。2008年にはUNDPと合意し、持続して支援を行っている。(講師:栃林さん)

Q3:明石康さんの「日本と国連の50年」という本にはUNTACの成功理由として国連放送局が挙がっているがどういうものなのか?また、国内で1つ以上の言語が使われている場合はどのように広報を行っているのか?(講師:栃林さん)

A:PKO活動には現地住民の支持が大切なため広報は重要となっているが、そもそも紛争国や途上国等の識字率が低い場合はテレビも普及していない事が多くAMラジオによる広報は効果的である。パキスタンの例ではあるが、例えば現在パキスタンとアフガニスタンの国境ではパシュトゥン語が主な使用言語であるためウルドゥー語との両方の言語で行うようにしている。また戦争を行わないようにといったメッセージを直接的に表現するのではなく、ドラマのストーリーの話の中に要素として入れて人々が関心を持つような活動も国連を通じて実施されている。(パキスタン在住国連職員:田瀬さん)

発表中(参加者の藤居さん)@Osaka

Q4:現地の人の理解必要という話と日本の自衛隊の武器の使用制限の話があったが現地住民はPKO派遣の軍隊についてどのような印象を抱くのか?(東京会場参加者:大橋さん)


A:武器があるからといって敵とみなされることはあまりなく、外国人だからという理由で友好的な場合が多い。現地の人々は日本の任務遂行に制限があることは知らないが、日本の部隊の仕事の質は良いので非常に評価が高いと聞いている。(講師:栃林さん)

 


参加頂いた講師の栃林 昇昌さんから

PKO実施の際には国内・国際法の法的根拠と国連交戦規定(ROE)の重なり合う部分しか行えない。現在PKO法改正の動きもあり、武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)、政府支援、ジェンダーといった分野とどのように関わっていくかが検討されている。また、政府開発援助において国際協力機構(JICA)のプロジェクトと自衛隊のコラボレーションが検討されている。任務連携では自衛隊が民間セクターやNGOに呼びかけているが、特にNGOは活動に中立性を保つ立場にあるので難しい。しかし、国際的に行われていることであるし、日本は「オールジャパン」として取り組むべき課題だと思う。今後は、一般市民にどうPKO活動を普及させていくかが重要になってくるであろう。PKO活動の第一世代は国と国のレベルでの争いであったが、以降は国内紛争となったため一般市民も重要なアクターとなった。また、政府レベルだけでの平和構築ではなく草の根活動でのPKO活動は今後活動を成功させるために必要になってくると言える。

参加者の声:神田 恵梨さん

私は熊本県からの参加でしたが、本勉強会のコーディネートを担当し、勉強会開催の3週間前から発表者のプレゼン構成のサポート、参加講師との調整、スケジュール作成をメールベースで取り組みました。このように遠隔地からでもインターネット環境さえあれば、プログラムに参加出来ることは本プログラムの非常に良い点だと思います。今回の勉強会では、国連PKOとは何か?という基本的な概要から変わりつつある活動の様子、講師でお迎えした栃林さんの専門知識と経験からのお話も伺うことが出来て、とても充実した勉強会になりました。そして、それら知識を踏まえた上で、実際にカンボジアへ渡航し現地で訪問した笑顔いっぱいの子ども達が出迎えてくれた「アツ村」や現在もカンボジアで地雷除去活動を行っているNGOの「JMAS」でのブリーフィングは感慨深いものになりました。事前にテーマに沿った内容で勉強をしたからこそ現地カンボジアにてより深い学びを得ることが出来たと思っています。


カバーページ
目次と第1章「はじめに」

第2章:渡航前事前勉強会
 第1節:第一回勉強会
 第2節:第二回勉強会
 第3節:第三回勉強会
 第4節:第四回勉強会

第3章:現地プログラム
 第1節:概要・全体マップ
 第2節:ブリーフィング
  第1項: アジア太平洋地域の食料安全保障について(FAOアジア太平洋地域代表兼事務所所長:小沼 廣幸さん)
  第2項:ユネスコの文化遺産保存と当該国への影響・意識について
      (元ユネスコ職員、JSPSバンコク事務所長:山下 邦明さん)

  第3項:MALISプロジェクト概要について(FAOカンボジア事務局プロジェクト・マネージャー:Iean Russell博士
  第4項:農民の収益向上への農協の取り組みについて(6名の農協運営メンバー)
  第5項:カンボジア特別法廷と国際刑事裁判について
      (UNAKRT捜査判 事部分析ユニット長:藤原 広人さん、UNAKRT広報官:前田 優子さん)

  第6項:警察訓練支援の人身取引取り締まり強化プロジェクトについて
      (カンボジア内務省長官兼LEAPプロジェクト議長:Prum Sokha内務省長官)

  第7項:カンボジアでの地雷問題と開発について(JMASカンボジア事務所:渕上 浩美さん)
  第8項: クメール・ルージュ政権下のジェンダーに基づく暴力被害者を対象としたプロジェクトについて
      (CDPコーディネーター:Savorn Duongさん)

 第3節:見学・ツアー
  第1項:世界遺産アンコール・ワット・バイヨン2時間遺跡巡りツアー(JASA広報担当:吉川 舞さん)
  第2項:アンロンベンのタ・モク博物館見学(元兵士の方より施設の説明)
  第3項:FAOが実施する保護池での魚の品種保護活動の見学(Iean Russell博士からの説明)
  第4項: かものはしプロジェクトのコミュニティーファクトリー支援活動の見学
      (かものはしプロジェクト現地駐在員:亀山 菜々子さん)

  第5項:UNESCO世界遺産候補サンボー・プレイ・クック遺跡ツアー(JASA広報担当:吉川 舞さん)
  第6項:キリング・フィールド見学
  第7項:トゥール・スレン虐殺博物館見学
 第4節:経験・交流
  第1項:アンロンベン地区における小学校の訪問(小学校の生徒約30人との交流)
  第2項:アンロンベン地区における稲刈り体験(村長の家で農村の人々約30名)
  第3項:クーレン地区での農村宿泊体験(水も電気もない村での宿泊)
  第4項:クーレン地区のヘルスセンター訪問(現地の医師・看護師とのQ&A)
  第5項:クーレン地区のフィールド・ファーマー・スクール訪問
      (フィールド・ファーマー・スクール実施者宅を訪問)

  第6項:オークルカエ村での農村宿泊体験(水も電気もない村での宿泊)
  第7項:「中田厚仁さん」の軌跡(通称“アツ村”に住む村人とのQ&A)
  第8項:CSP現地参加者全体でのディスカッション(現地渡航者25名によるディスカッション)

第4章:運営報告
 第1節:プログラム実行委員会組織概要
 第2節:プログラム策定
 第3節:ロジ手配
 第4節:会計報告
 第5節:現地での保健・健康状況
 第6節:参加者による事後アンケート内容と結果
 第7節:ソーシャル・メディアの活用とアウトリーチ
 第8節: 事後報告会の実施状況

第5章:次回に向けて

参考資料:
 表1:実行委員会組織図
 表2:プログラム作成プロセス一覧(概略)
 表3:現地手配詳細
 表4:CSP参加者アンケート集計結果(2013年1月作成)