カンボジア・スタディ・プログラム報告書(目次はページ下にあります)
第2章第3節:第3回勉強会
実施状況
「人身取引と児童の商業的性的搾取、規範的枠組みと具体的取組み」をテーマに、2012年10月27日(土)に第3回勉強会が開催されました。3名の参加者が各テーマについての発表し、その後NPO法人かものはしプロジェクト理事長の村田早耶香さんからカンボジアの児童の人身売買を防止するために現地での取組みを紹介していただきました。
勉強会議事録
カンボジア国内では農村から観光地や首都プノンペンへ子供たちが売られることが非常に多く大きな社会問題となっている。また、カンボジアは人身売買の「送出国」であると同時に、「受入国」でもある。農村では貧困が深刻化しているため、幼い10歳未満の子どもが親に売られる、職を紹介するという口実で仲介者に勧誘され、買春宿に連れて行かされる深刻な人権問題が数多く発生している。
観光業の成長に伴い、子どもを求めるために多くの外国人観光客がカンボジアに来ているデータもある。子どもを売春宿で強制的に働かせたり、反抗する子供に処罰したり、HIV感染の子供を捨てたりすることも実際起きており、事態は深刻である。子どもの権利が国際条約に保護されているにもかかわらず、このような「最悪の形態の労働」がなされていることはあってはならない。このような人身売買や児童買春を防止するために、国連児童基金(United Nations Children's Fund:UNICEF)、国際移住機関(International Organization for Migration:IOM)、国連開発計画(United Nations Development Programme:UNDP)、国際連合婦人開発基金(United Nations Development Fund for Women:UNFEM)などの国際機関が政策・予防・訴追・保護の分野から様々な取り組みを実施している。カンボジア政府も女性と子どもの人身取引、密輸、搾取、性的搾取撲滅計画キャンペーンや、人身取引性的搾取禁止法の制定、売春宿や性産業の取締強化、教育の強化などの活動を実施する。他にも、かものはしプロジェクトのようなNPO法人も現地に出向き、雇用の創出、人身売買防止のための活動をしている。
質疑応答一部抜粋(Q: Question, A: Answer)
Q1:カンボジアは国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約に批准しているのか?(大阪会場参加者:岡見さん)A:2001年に署名・批准している。しかしながら、カンボジアは条約の批准は早いがインプリメンテーションが遅いことが問題である。(パキスタン在住国連職員:田瀬さん)
Q2:強制労働をめぐる国際的枠組みでは、それぞれの対策や提携はどの主体がどうやろうとして決まったのか?(大阪会場参加者:岡見さん)
A:1996年に行われたストックホルム会議では、2000年までに行動計画を作ろうということが決まったが、法的拘束力がないために、実際に作った国は少なかった。ストックホルム会議はこれまでの会議と違い、主権国家と国際機関とNGOが対等な立場で参加したということで画期的な会議であった。国連の規範作りにNGOと国が一緒になって作成したインパクトはとても大きい。基本的に国際的な規範は主権国家がリードして作ってきたといえるが、1996年のこの世界会議では市民社会から規範作りの必要性が強く発せられたという点で大きなターニングポイントとなった。(講師:村田さん)
人身取引は、予防、犠牲者支援、加害者訴追も含め極めて多角的な問題である。対処の方法としても法律的にも教育的にも多角的。行動の変化、マインドの変化を起こさないといけない。一時的にどのくらい被害者が減ったということも重要だが、プロジェクトには必ず期限があるので、そのプロジェクトが終わった後にコミュニティにどのくらいインパクトを残せたかということのほうが重要。国連の取り組みについて、正確にインパクトを図る方法はまだしっかりと確立されていない。コミュニティを支える制度に国際社会は影響を与えられているのか。そのあたりは数値化されていないのが現状である。(講師:村田さん)
Q3:人身売買は、現状として減っているのか、それとも本当に減少し、状況は改 善されているのか?こういった問題は取り締まりが厳しくなるほど アンダーグラウンドに入り、リーチしづらくなるといった現状にあるので、 その点を考慮して伺いたい。(ハングアウト参加者:石井さん)
A:カンボジアに関しては、取り締まりが厳しくなっているのでアンダーグラウンド化しているのだが、数としてはかなり減少している。私たちは、良い手段ではないかもしれないが、実態調査のため、客のふりをして売春宿に行き、子供が出てくるかを調べることもある。2007年の調査ではプノンペンで子供が出てきたことがあり、より戻しが起きているようだったが、2010年に行った調査では、子供が出てくることはなく、特に10歳未満の子供を買うことは難しい状況になっていた。(講師:村田さん)
第2章:渡航前事前勉強会
第1節:第一回勉強会
第2節:第二回勉強会
第3節:第三回勉強会
第4節:第四回勉強会
第3章:現地プログラム
第1節:概要・全体マップ
第2節:ブリーフィング
第1項:
アジア太平洋地域の食料安全保障について(FAOアジア太平洋地域代表兼事務所所長:小沼 廣幸さん)
第2項:ユネスコの文化遺産保存と当該国への影響・意識について
(元ユネスコ職員、JSPSバンコク事務所長:山下 邦明さん)
第3項:MALISプロジェクト概要について(FAOカンボジア事務局プロジェクト・マネージャー:Iean Russell博士 )
第4項:農民の収益向上への農協の取り組みについて(6名の農協運営メンバー)
第5項:カンボジア特別法廷と国際刑事裁判について
(UNAKRT捜査判 事部分析ユニット長:藤原 広人さん、UNAKRT広報官:前田 優子さん)
第6項:警察訓練支援の人身取引取り締まり強化プロジェクトについて
(カンボジア内務省長官兼LEAPプロジェクト議長:Prum Sokha内務省長官)
第7項:カンボジアでの地雷問題と開発について(JMASカンボジア事務所:渕上 浩美さん)
第8項:
クメール・ルージュ政権下のジェンダーに基づく暴力被害者を対象としたプロジェクトについて
(CDPコーディネーター:Savorn Duongさん)
第3節:見学・ツアー
第1項:世界遺産アンコール・ワット・バイヨン2時間遺跡巡りツアー(JASA広報担当:吉川 舞さん)
第2項:アンロンベンのタ・モク博物館見学(元兵士の方より施設の説明)
第3項:FAOが実施する保護池での魚の品種保護活動の見学(Iean Russell博士からの説明)
第4項:
かものはしプロジェクトのコミュニティーファクトリー支援活動の見学
(かものはしプロジェクト現地駐在員:亀山 菜々子さん)
第5項:UNESCO世界遺産候補サンボー・プレイ・クック遺跡ツアー(JASA広報担当:吉川 舞さん)
第6項:キリング・フィールド見学
第7項:トゥール・スレン虐殺博物館見学
第4節:経験・交流
第1項:アンロンベン地区における小学校の訪問(小学校の生徒約30人との交流)
第2項:アンロンベン地区における稲刈り体験(村長の家で農村の人々約30名)
第3項:クーレン地区での農村宿泊体験(水も電気もない村での宿泊)
第4項:クーレン地区のヘルスセンター訪問(現地の医師・看護師とのQ&A)
第5項:クーレン地区のフィールド・ファーマー・スクール訪問
(フィールド・ファーマー・スクール実施者宅を訪問)
第6項:オークルカエ村での農村宿泊体験(水も電気もない村での宿泊)
第7項:「中田厚仁さん」の軌跡(通称“アツ村”に住む村人とのQ&A)
第8項:CSP現地参加者全体でのディスカッション(現地渡航者25名によるディスカッション)
第4章:運営報告
第1節:プログラム実行委員会組織概要
第2節:プログラム策定
第3節:ロジ手配
第4節:会計報告
第5節:現地での保健・健康状況
第6節:参加者による事後アンケート内容と結果
第7節:ソーシャル・メディアの活用とアウトリーチ
第8節:
事後報告会の実施状況
参考資料:
表1:実行委員会組織図
表2:プログラム作成プロセス一覧(概略)
表3:現地手配詳細
表4:CSP参加者アンケート集計結果(2013年1月作成)